野球場?ゴルフ場??不思議スポット 東京「神宮第二球場」で歴史の大変貌を感じる

野球場?ゴルフ場??不思議スポット 東京「神宮第二球場」で歴史の大変貌を感じる

更新日:2015/06/18 13:47

プロ野球・東京ヤクルトスワローズの本拠地であり、東京六大学野球などが行われ「学生野球の聖地」でもある明治神宮野球場(神宮球場)。
全国的にも有名なこの球場ですが、神宮球場がもうひとつあることをご存知でしたか?
その名も「神宮第二球場」。
神宮球場のすぐお隣にあります。
しかしそれは「本家」とはずいぶんと趣を異にする、日本でも非常に変わった野球場なのです。
それでは第二球場に入ってみましょう!

ここではかつて大相撲の本場所も開かれた

ここではかつて大相撲の本場所も開かれた
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明治神宮野球場が完成したのは1926年10月22日のこと。
2016年で90周年を迎える、日本でもかなり歴史ある野球場です。
その隣には明治神宮相撲場がありました。

1945年に太平洋戦争で日本が敗れると、国技館が進駐軍によって接収されてしまったため、この相撲場で1947年から翌年にかけて大相撲の本場所が3回開催されました。
ただし屋外の相撲場だったため、「晴天」の条件付きでの大相撲開催であり、今では考えられませんが相撲が「雨天順延」ということもあったといいます。

そして1961年、相撲場は神宮第二球場に生まれ変わります。
左右両翼が91メートル、センターは116メートルの広さ。
隣の神宮球場(両翼97.5メートル、センター120メートル)に比べると、ひとまわり小さな球場です。
現在は主に高校野球の東京都大会(春・夏・秋)で使用されています。

野球よりもゴルフ練習場として使用される時間が長い?

野球よりもゴルフ練習場として使用される時間が長い?
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プロ野球の球団が本拠地とする神宮の第二球場。
どれほど立派な野球場なのだろう?と想像を膨らませる人も多いはず。
でも、一歩そこに足を踏み入れた人は例外なくビックリするでしょう。

スタンドはバックネット裏と一塁および三塁のベンチ後方にしかありません。
一塁側スタンドがあるはずのほうを見てみると、そこにはゴルフの打ちっ放しマシーンがいくつも並んでいます。
そして外野にもスタンドはなく、かなり背の高いネットが張ってあるだけ。
ネットには野球ではなくゴルフ関連の広告がいくつも掲示されています。

実はこの第二球場、1972年にお隣でオープンした明治神宮外苑ゴルフ練習場(外苑ゴルフクラブ)の西練習場も兼ねているのです。
第二球場がゴルフ練習場の顔を持つようになったのは1973年のこと。
西練習場は野球開催の時間帯は営業せず、全試合の終了後にオープンします。
しかしどちらかといえば、野球が行われるよりも、打ちっ放しゴルフ場として使用されている日のほうがはるかに多いと言えます。

いい味をかもし出す手書きスコアボード

いい味をかもし出す手書きスコアボード
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この球場の特色はスコアボードにあり、です。
チーム名、選手名、得点、そして審判名。
すべてが手書き!
なんだか味があるとは思いませんか?

写真の延長11回から13回までのスコアのところをよく見てください。
まるで窓のように半開きになっています。
ここには記録員がいて、試合の状況を見守っています。
そして各イニングのスコアを掲示していきます。
それだけではなく、ボール・ストライク・アウトカウントやヒット・エラーなど判定のライト点灯などの役割もあります。

手書きのスコアボードと言えば、あの甲子園球場も1983年の夏の選手権大会までは手書きでした。
甲子園も今は立派な電光掲示板になってしまいましたが、東京のど真ん中にある球場で、今なお懐かしの手書きスコアボードが生き残っているのです。

おすすめは二階席・・・その理由は?

おすすめは二階席・・・その理由は?
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この神宮第二球場、外野スタンドもないのに5636人まで観客を収容できます。
なぜなら内野のスタンドは2階式になっており、観客多数の試合では2階席を開放します。
2015年4月に行われた高校野球の春季大会の準々決勝では、好カードが続いたため2階席を開放してもなお立ち見の観客があふれるほどの満席になりました。

2階席が屋根の代わりとなる1階席の後方では、夏の強い陽射しや雨風をしのぐことができます。
しかし本当のおすすめは2階席での観戦でしょう。
とりわけ三塁側に陣取るのがベスト。
春と秋には隣の神宮球場で東京六大学野球が開催されるのですが、一塁側の打ちっ放しゴルフ場の後方に、そのスコアボードが丸見えなのです。
つまり目の前の試合を観戦しながら、六大学野球の経過もリアルタイムで楽しめるというわけです。

2階席と言うこともあり、ここからの眺望も絶佳。
春や秋の晴天の日には「神宮の杜」の景色も満喫できます。

東京五輪の影響で、数年後には消滅の運命

東京五輪の影響で、数年後には消滅の運命
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野球のさかんな日本でもなかなか見られない、こんな風変わりな野球場。
しかし、数年後には姿を消してしまうことが決まっています。

2015年4月、明治神宮外苑の大改造案が明らかになりました。
その計画案によると、神宮球場のそばにある秩父宮ラグビー場は2020年の東京五輪の前に解体。
その跡地は、東京五輪の駐車場としての利用が検討されています。
五輪終了後、今のかなり年季の入った神宮球場に代わり、そこに「新しい神宮球場」が建設されます。
新球場完成後に、新たな秩父宮ラグビー場を建設することとなります。

それでは新しいラグビー場はどこに建設されるのでしょうか?
それは、いま神宮第二球場のある場所に建てられる予定となっています。
すべての施設の完成は2025年の予定だそうです。
ただし、「新しい神宮第二球場」の建設計画はないため、これは消滅ということになります。

写真は神宮第二球場のレフト側を撮影したものです。
2014年の秋までは、ネットの向こうに国立競技場の姿がありました。
でも、それは取り壊され、2015年からは写真のように何も写っていません。
かつての国立競技場がたどった運命は、そのままこの球場の将来でもあるのです。

神宮外苑の歴史的な大変貌を感じることができるスポット

2019年に日本で行われるラグビーのワールドカップ。
そして2020年に開催される東京五輪。
そのメーンスタジアムとなるはずの新国立競技場の建設について、いくつかの問題点が指摘されています。

でも、ラグビーのワールドカップと五輪という、世界的なスポーツイベントが開催される明治神宮外苑が、これからどんどん変貌していくことは間違いありません。
21世紀とは思えない雰囲気を漂わせる神宮第二球場は、まもなく消滅するという未来が待ち受けていることからも、新しい時代への変化を肌で感じることができる球場とも言えます。

甲子園目指す高校球児の熱いプレーを観ながら、歴史的な変貌を遂げようとするこのエリア、さらには東京に思いをはせてみましょう。
こうした高校野球の楽しみ方ができるのは東京、そして第二球場が存在する今だけなのですから。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/04/12−2015/04/18 訪問

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