世界遺産の街から中世へダイブ!フィリピン・ビガン歴史地区で麗しの夜を

世界遺産の街から中世へダイブ!フィリピン・ビガン歴史地区で麗しの夜を

更新日:2015/06/15 15:17

フィリピン・ルソン島北部の南シナ海に面するビガン歴史地区は、16世紀後半にスペインに征服され植民地として発展した港町。商業、貿易の交易拠点として栄えた街は、フィリピンや中国の建築様式にスペインやラテンアメリカなどの影響を受けた建物が建ち並び、美しい風景を作り出しています。

第2次世界大戦でフィリピンの古い街並みの多くが戦火に巻き込まれ消失した中で、唯一生き残ったビガン歴史地区を訪ねてみましょう。

フィリピンの植民地時代を物語る「ビガン歴史地区」へ

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ルソン島北部の街ビガン(Vigan)は、フィリピンの首都マニラから北へ約400キロメートル、またはのルソン島北西端にあるラオアグ(ラワグ、Laoag)から南へ約100キロメートルの南シナ海に面する、人口5万人に満たない小さな街です。

スペインの都市計画に基づいて碁盤目状に整備された石畳の通り沿いには、16世紀の古くて和洋中が織り交ざった建物が立ち並びます。1階部分はコロニアルな石造り、2階部分は障子のような引き窓が特徴的な木造建築、そして屋根は中国人が持ち込んだ瓦が使われています。バハイナバト様式と呼ばるこの造りは、先住民イロカノ人の高床式住居にヒントを得たスペイン人神父が、大雨や湿気、南国の暑さや地震にも耐えうる住宅を考案したといわれています。

窓の白い部分は、実は紙ではなくカピス貝でできています。
カスピ貝を薄く削ってはめ込んだ窓は、フィリピンを照りつける紫外線を和らげる効果があるのだとか。これもフィリピンの特徴的な様式なので、機会があればじっくりと鑑賞してみてください。白く光り輝く螺鈿の窓にうっとりしてしまうはずです。

カレッサの音が心地よく響くメナ・クリソロゴ通り

カレッサの音が心地よく響くメナ・クリソロゴ通り

提供元:遠藤隆尚

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ビガン歴地地区の目貫通り、メナ・クリソロゴ通りを歩いてみましょう。
フィリピンといえば、ジプニー(乗り合いバス)やトライシクル(三輪タクシー)が走り回り、その隙間を縫ってバイクが縦横無尽に駆け抜けるイメージ。なので、ここビガン歴地地区の核心地域(世界遺産の範囲として特に保護している場所)に足を踏み入れたら、その違いに驚くはずです。エンジン付きの車両の通行が禁止されているビガン歴史地区では、ゆっくりと散歩ができるのです。

カレッサ(馬車)を牽引する馬が石畳を蹴りあげる軽快な音、アイスクリーム売りの合図の鐘の音がこだまして、中世にタイプスリップしたような感覚になるメナ・クリソロゴ通り。バハイナバト様式の建物の骨董品屋やカフェも、街に華を添えています。

街のシンボル「セント・ポール大聖堂」へ

街のシンボル「セント・ポール大聖堂」へ
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白亜の壁にやわらかなクリーム色がアクセントの「セント・ポール大聖堂(St. Paul Metropolitan Cathedral)」は、1641年に建設されたビガン歴史地区のシンボルです。

聖堂に足を踏み入れてみましょう。
まずは入り口に設えられた貝殻を模した聖水盤の聖水に指をつけ、身を清めます。内部は東西に長い長方形で、採光用の高窓と列柱のアーケードを持つバシリカ様式の聖堂になっています。どれも古く美しい彫刻が施され、まるで中世の美術館のようです。

教会前には可愛らしく飾り付けを施された馬が引くカレッサ(馬車)が待機しています。ここからカレッサに乗って、世界遺産の街を巡ってみるのも気持ちが良さそうですね。

ブルゴス広場ではフィリピン・ローカルフードに挑戦?!

ブルゴス広場ではフィリピン・ローカルフードに挑戦?!
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セント・ポール大聖堂の前、メナ・クリソロゴ通りの出発点にあるのが「ブルゴス広場(Plaza Burgos)」です。日中は市民の憩いの場として、夜は広場の大きな樹木に飾られたランタンが、幻想的な時間を演出します。

ここではフィリピン・ローカルフードに挑戦してみましょう。
広場のすぐとなりにある屋外フードコートで、名物ビガン・エンパナーダ (Vigan Empanada)が食べられます。野菜や卵に肉などを薄い生地で包み込み、カラッと揚げたエンパナーダはスペイン由来の料理。揚げたて熱々のエンパナーダに、好みでビネガーと塩を付けて頂きます。散歩の途中の小腹が空いた時にピッタリなので、チャレンジしてみてください。

常夏の歴史地区は夜がベストの散歩時間

常夏の歴史地区は夜がベストの散歩時間

提供元:遠藤隆尚

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太陽が沈み日中の暑さが和らぐころ、樹木に飾られたランタンや街灯が優しく街を照らしはじめたら、もう一度街に繰り出してみましょう。昼とはまた違うビガンの表情が見られます。

第二次世界大戦中、フィリピン各地の古い町は焼失しました。その中にあってビガンは、戦火を免れた奇跡の街ともいえます。

時は1943年。日本軍が占領したビガンに、日本人司令官とフィリピン人の妻という1組の家族がいました。高橋大尉とフィデラの出会いは山岳の街バギオ。ここで抗日運動に参加した容疑で投獄された母親の娘がフィデラでした。ビガンで再会した2人は恋に落ち家庭を築きます。そんな幸せもつかの間、1945年頃には日本の敗戦が濃くなり、高橋大尉は撤退と共にビガンの破壊と住民殺害の命を受けます。しかし美しいビガンの街とフィリピンの人々を心から愛した高橋大尉は、ビガンのドイツ人神父に家族を託し、自らは山中に入り死を決意します。

2009年にこの実話を元に映画「Iliw(イリウ)」が制作されました。スペインの植民地にはじまり戦争の悲劇と愛の物語の舞台と、複雑な歴史を見てきた街ビガン。夜の街は美しく、その物語を私たちに語りかけてくれます。

保護の精神が息づくビガンは後の世に残したい大切な世界遺産

人々の思いによって守られてきた街ビガン。
その後も1970年頃から保護活動が盛んになり、やがて1999年に世界遺産に登録されます。そして2012年には街をあげての保護活動が評価を受け、世界遺産管理における最高モデル「ベスト・プラクティス賞」を受賞しています。美しく歴史のある街ビガンで世界遺産の魅力を味わってみてください。

■アクセス
マニラから:バス(10〜12時間)
または飛行機でラオアグに移動し、ラオアグからバス(2時間程度)

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/10/21−2013/10/24 訪問

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