国分寺市「殿ヶ谷戸庭園」で、四季の山野草めぐりを楽しもう!

国分寺市「殿ヶ谷戸庭園」で、四季の山野草めぐりを楽しもう!

更新日:2015/06/18 12:59

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
自然の野山や草原に生える“山野草”は、園芸植物のような華やかさこそないものの、力強さと落ち着きのある風合いは自然の神秘を教えてくれます。自然志向が高まりつつある近年の日本では、その人気も上々です。かといって郊外の野山なんて気軽に行けないもの……そんな時に嬉しいのが、山野草を積極的に植栽した公園や庭園。今回ご紹介する殿ヶ谷戸庭園は、限られた敷地ながらも特に山野草の数や種類が多い都内の名スポットです。

秋の七草の混植は、夏の風物詩

秋の七草の混植は、夏の風物詩

写真:鷹野 圭

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ここ殿ヶ谷戸庭園は、在りし日の武蔵野の原野の風景を今に伝える日本庭園。植栽されている植物も古くから関東地方に生えていた草木が中心で、山野草も数多く取り入れられています。

写真は、秋の七草に数えられる山野草の中でもとりわけ花の美しいキキョウとナデシコ(カワラナデシコ)。人気の高さゆえか、最近ではお花屋さんなどでも鉢植えのものをよく見かけますね。最近では野生の株はめっきり数が減ってしまいましたが、かつては里山の道端などでごく普通に見られたものです。庭園内のものはもちろん人工的に植えられたものですが、限りなく自然に近い形で生えているので必見です。

ちなみに“秋”の七草と言いつつ、キキョウとナデシコの見頃は6月末から8月初頭あたり。見逃さないように気を付けましょう! 他にも秋の七草つながりで「萩(はぎ)のトンネル」が見所。庭園の南の橋辺りにありますので、ぜひ下をくぐってみてください。

湧水の涼しげな音に耳を傾けて、一休み

湧水の涼しげな音に耳を傾けて、一休み

写真:鷹野 圭

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深緑の中、苔むした岩場の間を澄んだ水が静かに落ちる……まさに清流の上流域を思わせるシーンです。ここは庭園内で最も高低差の大きい次郎弁天池の周辺。国分寺崖線の天然の湧水が常に流れ、自然の中に和風情緒あふれる贅沢な景観を描きます。湧水の量は1分間に平均して約37リットル。古くには縄文時代より飲み水として利用されていたそうです。

滝の上方に見える「紅葉亭」は、眼下に池を見渡すことのできる殿ヶ谷戸庭園でも1.2を争う名スポット。夏は深緑、秋は文字通り紅葉に包まれながら、流水のつくりだす神秘的な庭園美を満喫いただけます。椅子に腰かけてリラックスすると、時間が経つのを忘れてしまいそうです。

山野草と“雨”の競演もぜひ見ていただきたい

山野草と“雨”の競演もぜひ見ていただきたい

写真:鷹野 圭

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公園や庭園を巡るのならば、普通はやはり青空の下を歩いた方が気持ちがいいものですし、写真なども撮りやすいことでしょう。実際、お天気が良いに越したことはありませんが、例えば鎌倉市のアジサイ群落のようにむしろ雨模様の方が映える景観もあります。ここ殿ヶ谷戸庭園も、多少好みは分かれるかもしれませんが雨の日でも十分に楽しめるスポットの一つ。草木が多くとりわけ夏場は常にしっとりとしているため、むしろ雨露に濡れていた方がよりムードが高まる面もあるのです。

写真は、次郎弁天池の近くに生えていたギボウシ。前日から続く雨でちょうど露が滴っていますが、周りが水場ということもあってか濡れているのがむしろ美の演出に一役買っているようにも見えます。うっすらともやのかかったバックもこれまた効果的。都会の庭園の一角に過ぎないという“現実”を忘れさせ、あたかも山野草の生える本物の豊かな自然地に迷い込んだかのような錯覚を起こさせます。

もちろん雨具は嵩張りますし、池の周りは自然な感じの岩場が多いので滑りやすいというデメリットはあります。それでも、雨の日だからこその植物の姿、より潤いに満ちた庭園景観は一見の価値があります。夏は梅雨時と梅雨明け、ぜひ2度足を運んでいただければと思います。

武蔵野の原野を思わせる、草原の山野草群

武蔵野の原野を思わせる、草原の山野草群

写真:鷹野 圭

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上記のキキョウとナデシコのようにきっちり区分けされて植栽されている山野草もありますが、逆に草丈の低い原っぱのような場所にごく自然な感じに生えているものも多々見られます。回遊式の日本庭園である殿ヶ谷戸庭園では、遊歩道を一周ぐるりと巡る中でこうしたナチュラルな野草景観を何度となく目にすることでしょう。

自然な植生を重視しているらしく、園路近くの目立つ位置に無理矢理植栽するようなことはしていません。あくまで植物が好む環境で生育させるのが基本ですから、それぞれの植物がどのような環境を好むのか?木に覆われた日陰が好きなのかはたまた明るい広場を好むのか?プレートなどによる詳しい説明がなくても一目瞭然です。例としてカワラナデシコは写真にもある通り開けた草原環境に群生し、逆にギボウシは日のあまり差さない林床部を好みます。そうした特性を、視覚を通じてたっぷりと勉強できるスポットです。

見られる山野草の種類は季節によりまちまちですが、まず晩冬のフクジュソウに始まり、その後初春には人気者のカタクリや近年野生のものは激減しているクマガイソウ、そして夏に向かうにつれてアジサイやオカトラノオ、そして真夏にはキキョウやナデシコなどが次々と開花していきます。最新の山野草情報は殿ヶ谷戸庭園のホームページ(東京都公園協会サイト内)でも見頃の草花として随時インフォメーションされていますので、お出かけの前にチェックしておくといいかもしれません。

公園の成り立ちや植物種などをもっと知りたい時は…

公園の成り立ちや植物種などをもっと知りたい時は…

写真:鷹野 圭

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写真は殿ヶ谷戸庭園のサービスセンター内。
回遊式日本庭園らしく和風な造りで「センター」というには少々違和感がありますが、大正初期に初めて整備されから現在に至るまでの歴史を始め、季節の植物に関する情報などの庭園に関する多彩な展示があり、庭園を深く知るには必見のスポットです。散策する前にここで庭園のことを予習するもよし。一通り見て回った後にプラスアルファの知識を仕入れるために立ち寄るもよし。駅に近い住宅街のど真ん中に何故これだけの規模の日本庭園があるのか? 何故四季の山野草を楽しめるのか? 殿ヶ谷戸庭園ひいては“自然”と“歴史”を深く知り、考えるきっかけとなるはずです。

“純・日本の草花”を楽しみたい時におススメ

市街地を出て郊外の緑地や森林公園、高尾山を始めとした山々などに足を運べば、数は少ないもののまだそれなりに山野草を見かける機会はあります。しかしながら当然交通費が嵩みますし、歩き回るのはもちろん現地に行くだけでもかなりの時間がかかることでしょう。

ここ殿ヶ谷戸庭園は、国分寺駅から程近いアクセス抜群の立地で、お年寄りや体力に自信のない方にもちょうどよい面積。それでいて春夏秋冬さまざまな山野草が姿を見せる首都圏でも稀有な日本庭園です。特に夏場は花の数・種類共に多く、人気の秋の七草も真夏がピークといえます。園路を囲う広い樹林がたっぷりと葉を茂らせて日陰を作ってくれますので、強い日差しもかなりやわらげられることでしょう。和の魅力にあふれた庭園で、森林浴と花めぐりをお楽しみください。

【アクセス】
東京都国分寺市南町二丁目
JRほか「国分寺駅」から徒歩約2分

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/07/06 訪問

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