郷愁誘う校舎でタイムトラベル!神戸「北野工房のまち」

郷愁誘う校舎でタイムトラベル!神戸「北野工房のまち」

更新日:2015/06/03 15:35

万葉 りえのプロフィール写真 万葉 りえ レトロ建築探訪家、地域の魅力伝え人
旧北野小学校のモダンな校舎を活用した「北野工房のまち」。ここは神戸らしいお店に、他では手に入らないお土産や手作り体験のメニューもたくさんある、ワクワクのマイスターガーデン。
何を買おうか、何をしようか、選ぶのに夢中になりますが、それだけではもったいない。建てられたのは90年も前なのに、とてもおしゃれな校舎!その上、子供たちが学んでいたころの面影もたっぷりなんです。郷愁誘う校舎をご紹介しますね。

異人館の町の小学校

異人館の町の小学校

写真:万葉 りえ

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たくさんの異人館がある北野は、神戸観光にははずせない場所。
神戸の街中を南北につなぐ道の一つ「トアロード」を山側に向かうと、異人館通りの手前に旧北野小学校、現在は「北野工房のまち」になった建物が建っています。
「神戸マイスター」とは全国的にも通用するハイレベルの技術 ・技能者を神戸市が認定した制度。そのマイスターの技術を活かしたお店が「買って食べて体験して遊ぶ」というテーマで、訪れた方の楽しい旅のお手伝いをしています。

ここは、もと、明治41年に開校された小学校の校舎。明治の開港から新しいものがどんどん入ってきた土地柄のうえに、この辺りにはたくさんの外国人が住んでいたので、モダンさはピカ1。よく見れば、ここかしこに当時の面影が見つかりますよ。

校長室は「思い出のアルバム」

校長室は「思い出のアルバム」

写真:万葉 りえ

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例えば映画「二十四の瞳」で大石先生が弾いていたような、子供たちの歌声をリードして音を響かせていたであろうかわいい足ふみオルガン。そんなオルガンが1階にある「校長室(北野小学校資料室)」に置かれています。小学校時代の校長室を思いだしながら、のぞいてくださいね。
ピアノが手に入りにくかった時代でもあったでしょう。長い間大事に使われてきたようで、細かい部品も残っています。もう、音を響かせることはないのかもしれませんが、フワーッと空気が通りながら出していくやわらかさのある音を懐かしく思いだされる方もあるでしょう。

また、黒板に、先生が授業で使っていた大きな三角定規。黒板の前には、児童用の椅子も置かれていますよ。久しぶりに座ってみませんか。

校長室にはこんな撮影コーナーも設けられているんですよ。
10年前に小学生だった方も、もっともっと前に小学生だった方も、ここでしばしの間小学生時代にタイムスリップ。
真面目なお子さんだった方も、ひょうきんなお子さんだった方も、往時を思いだしながらここで記念撮影をしましょう。はい、チーズ!

ステンドグラスの光が揺らめく踊り場

ステンドグラスの光が揺らめく踊り場

写真:万葉 りえ

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休み時間になると、子供たちが一斉に上り下りしていた階段。段差はおさえられているけれど幅は広くとられていて、子ども達に合わせて設計されたのがよくわかります。休み時間はとても賑やかだったのでしょう。
手すりの高さも昭和の初めの子ども達の身長に合わせて、少し低めに作られているようです。手すりの下には、込み入った細工の丸い装飾まではめ込まれているんですよ。機能一辺倒ではなく、子ども達に豊かな情緒を育んでいってほしいという願いも込められているんですね。

そして、階段の踊り場には、窓にステンドグラス。小さな校舎だったのに、ここだけでなく、数か所にステンドグラスが用いられているのです。
色ガラスを通して入ってくる光はやさしく、校舎の壁にきれいな色を映し出し、大人になっても心に残る思い出になっていったことでしょう。

昭和初期には、神戸市内に鉄筋コンクリートの校舎がいくつも建てられました。正確な理由はわかりませんが、いくつも校舎が建てられた中で、この校舎は随一モダンなデザインが各所に用いられた校舎だったそうです。

工作室に子供たちの笑い声

工作室に子供たちの笑い声

写真:万葉 りえ

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階段の近くには、ここで学んでいた子ども達の力作が今も壁を飾っています。数人で力を合わせて作り上げた力作のようです。制作に携わった子ども達の名前も、ともに表示されています。
出来上がるまでの間は、きっとたくさんのお喋りと笑い声でにぎやかだったのでしょう。

自分たちの作品を飾ってもらえた子ども達が、これを見るたびに誇らしい気持ちになったことを想像できますね。

温かな講堂の灯り

温かな講堂の灯り

写真:万葉 りえ

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現在では、児童や生徒が行事等で集まる場所は、ほとんどが体育館ですね。しかし、当時の大事な行事は「講堂」でした。
町中の小さな小学校なので、三階に講堂が設けられています。今の体育館とは違い、式典には町のお偉方を招いたりする威厳を持った場所だったようで、天井には大きなシャンデリアが光を放っていたそうです。きっと、その空間に入った子ども達は厳粛な気持ちになったでしょう。

ここのスタッフの方が教えてくださったのですが、そのシャンデリアが二階から三階へ至る階段の天井に移設されているので見ることができるんですよ。イベントなどで三階への入場が制限されていることもありますが、二階からでもわかるのでぜひ階段下から見上げてくださいね。
その大きさを見れば、講堂に込めた設計者の思いも感じられるかもしれません。

おわりに

「北野工房のまち」は神戸の美味しいものを扱う店も多く、買い物をしたり、どの手作り体験をしようか考えたり、巡っているだけでも楽しい場所です。

しかし、子ども達が少なくなって、学校の統廃合が進む現代で、こうやって新しい形になって人々が集まる場所になった小学校というのは稀有な存在でしょう。また、ご自分が卒業した小学校を訪れる機会などないという方も多いのではないでしょうか。

「おしゃれな神戸」や「おいしい神戸」の旅の途中で
しばし、心も、小学生の時代へ旅していただければ…

掲載内容は執筆時点のものです。

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