断崖の天空城!カンボジアの世界遺産「プレア・ヴィヒア寺院」攻略ガイド

断崖の天空城!カンボジアの世界遺産「プレア・ヴィヒア寺院」攻略ガイド

更新日:2015/05/29 15:40

カンボジアの世界遺産、アンコール遺跡群のあるシェムリアップから北東へ約120キロメートル、タイの国境にほど近いChoam Khsant 郡に位置するプレア・ヴィヒア寺院(Preah Vihear Temple)は、カンボジアで2番目の世界遺産として2008年に登録されました。

クメール語でもタイ語でも「神聖な寺院」を意味するプレア・ヴィヒア寺院の、その歴史と見所に迫ってみましょう。

シェムリアップから3時間!須弥山をイメージしたクメール王朝の寺院

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シェムリアップから北へ車で約3時間。赤く乾いた大地にサバンナのような木々が点々と続く荒涼とした大地。遥か昔に舗装しその後放置されたままなのか、山岳でもない平坦な道なのに酔い止め薬が必要なほどのでこぼこ道を乗り越えた先に、今回ご紹介するカンボジアの世界遺産プレア・ヴィヒア寺院があります。

カンボジアとタイの国境をまたがるダンレック山脈上の、海抜625メートルの断崖にあるプレア・ヴィヒア寺院は、9世紀末にクメール王朝によってヒンドゥー教寺院として建設され、その後12世紀頃まで増築が繰り返されました。そしてヒンドゥー教が衰退すると、仏教寺院として扱われました。

寺院は山脈の地形を活かし、南北一直線上に配置されています。これは古代インドの世界観で中心にそびえる聖なる山「須弥山」を模した形式だといわれ、東向きが基本のクメール王朝の寺院建築の中にあってとても珍しい配置なのだそうです。

領土問題にさらされ続けた歴史

領土問題にさらされ続けた歴史
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9世紀から15世紀頃まで東南アジアに広く君臨し、カンボジアの礎ともいわれるクメール王朝時代に建築されたプレア・ヴィヒア寺院。14世紀後半頃から勃興したタイ・アユタヤ王朝により陥落し、プレア・ヴィヒア寺院はタイの領土へ取り込まれてしまいます。その後もフランス領になるなど領土問題の複雑な歴史にさらされてきたプレア・ヴィヒア寺院は、周囲の自然環境と調和した宗教遺跡としての価値が認められ、2008年に世界遺産に登録されます。

登録後もタイとカンボジアの間で領有権を巡る緊張は続き、行けない世界遺産となってしまいます。国際司法裁判所で裁判になるまで発展したこの争いは2013年にようやく解決、プレア・ヴィヒア寺院を訪れられるようになったのは、実に最近のことなのです。

参道から階段を登ると、見晴らしのよい第三塔門に到着します。そのまま先に進まず、左手に折れて歩いてみましょう。長く続く遺跡の壁が途切れたれたその先に、見晴らしのよい開けた場所があります。そこから今まで歩いてきた方向に振り返ればタイ領で、タイの国旗が見えるはずです。

*階段登って左手に歩き、写真のように木が生えている遺跡を目印にしてください。その先でタイ側が見られます。

美しいレリーフが残る塔門は要チェック!

美しいレリーフが残る塔門は要チェック!

提供元:遠藤隆尚

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約800メートルの参道には5つの塔門があり、これもまたプレア・ヴィヒア寺院の特徴をよく表しています。山の斜面を活かし各塔門の手前に階段を作り、この階段を登り振り返れば今まで通ってきた道の展望がみられ、塔門をくぐらないと次の中庭が視野に入らないようになっています。この作りは日本の神社境内にある御神橋のように、聖と俗との境、俗から聖の域に入るには橋を渡り祓い清めなければならない、それとと同じような宗教観が感じられます。

各塔門の破風(はふ)にも注目をしてみましょう。
第5塔門では朱色の色彩が残っているのが見られます。第4塔門はアンコール・トムなどと同じく南側に三角形の塔門があり、ここにプレア・ヴィヒア寺院最高傑作とも言われている、乳海攪拌(にゅうかいかくはん)が描かれています。そして第3塔門では、創建当時に祀っていたヒンドゥー教のシヴァ神の姿が見られます。

*北側(駐車場側)から第5、第4…と便宜的に呼ばれています。
*乳海攪拌は、ヒンドゥー教における天地創造の神話で、ヴィシュヌ神を中心に綱引きをしているようなレリーフです。

繋ぎ目に注目?!数世紀に渡る増改築の跡を探してみよう

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9世紀にヒンドゥー教のシヴァ神を祀る寺院として建てられたプレア・ヴィヒア寺院ですが、創建当時の建物はほぼ失われています。

現存する最古の建物は、10世紀初期のコ・ケー時代に作られたと見られる第5塔門です。参道最初にお目見えする柱と梁のみでできた第5塔門は、カンボジアにある他の遺跡では見られない特徴的な構造です。カンボジアのお札(2000リエル)の絵柄にもなっているので、行ってみたら比べてみてください。

数世紀にもわたり増改築が繰り返された寺院ですが、今日私達が良く目にしているのは、11世紀後半から12世紀前半のスーリヤヴァルマン1世と2世の統治時代に増築されたものです。建物をよくよく観察すれば、岩の違いや繋ぎ目な増改築の痕跡が見つかるかもしれませんね。

625メートルの断崖から見下ろす絶景に古代の歴史を感じて

625メートルの断崖から見下ろす絶景に古代の歴史を感じて
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遺跡を突き抜けていちばん奥まで進めば、そこに広がるのはカンボジアを見渡す絶景。古来より続くクメール古道と灌漑用に掘られた正方形の人口湖が、遥か眼下にみられます。

また巨大な一枚岩が割れた部分の先に、崖の下の岩盤をくり抜いて設えた小さな祠があります。熱心な仏教徒の人々が供えるたくさんのお線香と、なぜかラオスの寺院でよく見られるお供え用の仏花「マークベン」にも似た飾りが見られ、かつてクメール王朝がタイやラオスまで広がっていたその歴史を感じさせてくれます。入り口には標識もなく、人が踏み込んで自然にできた道のようなものがあるだけですが、探しだして是非お参りをしてみてください。

道中の遺跡と組み合わせて効率よく!

プレア・ヴィヒア寺院はアクセスが困難ですが、その分人も少なくゆっくりと遺跡を鑑賞できます。途中、密林の中にひっそりとたたずむベンメリア遺跡(Beng Mealea)や、謎多きコー・ケー遺跡(Koh ker)などと組み合わせて、かつて栄華を極めたクメール王朝の面影を辿るのも楽しそうですね。

■プレア・ヴィヒア寺院 (Preah Vihear Temple)
アクセス:シェムリアップから片道約3時間。ツアーに参加をするか、1日車をチャーターして訪れるのが、一般的です。

*パスポートが必要になります。
*入場料は山麓のチケット・センターで支払います。
*山頂へは乗り合いピックアップ車へ乗り換えるため、その費用が別途発生します。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/03/22 訪問

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