ヨーロッパ中世の歴史に浸る!ベルギーの古都ゲントの四大教会巡り

ヨーロッパ中世の歴史に浸る!ベルギーの古都ゲントの四大教会巡り

更新日:2018/10/26 12:04

菊池 模糊のプロフィール写真 菊池 模糊 旅ライター、旅ブロガー、写真家
ベルギーのゲントは、日本で言えば奈良にあたる古都で、その美しい町並みは中世の雰囲気にあふれています。
中でもスヘルデ・ゴシック様式の教会群は、とても見事です。個性豊かであるゲントの四つの大きな教会を巡る旅路は、中世の歴史を実感する得がたい体験となるでしょう。

宗教的芸術と歴史的建築が融合した、文化の香り豊かなテーマのある旅として、ゲントの四大教会巡りを自信を持っておすすめします。

聖ミハエル橋と聖ミハエル教会を楽しむ!

聖ミハエル橋と聖ミハエル教会を楽しむ!

写真:菊池 模糊

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ゲントの意味は「合流する」というケルト語から来ており、ここでレイエ川とスヘルデ川が合流することから命名されました。そのレイエ川にかかっている旧市街中心部の橋が「聖ミハエル橋」です。
この橋はゲント随一のビュースポットとして非常に有名で、ここからは世界遺産の鐘楼をはじめとして、聖ミハエル教会、聖ニコラス教会、聖バーフ大聖堂を望むことができます。

写真は聖ミハエル橋から、すぐ近くにある聖ミハエル教会を撮影したものです。15世紀に建築された教会ですが今も堂々とした姿を見せています。
この聖ミハエル教会の外観は複雑で、異国情緒があり重量感にあふれています。内部も荘厳な雰囲気なので、もし時間的に余裕がある場合は、内部も見学してください。

この教会を見たあとは、北方向に向かい円を描くように散策します。すなわち、レイエ川両岸のグラスレイとコーンレイ〜フランドル伯爵城〜クラーンレイ〜デュレ・フリート(大砲)〜金曜日広場〜聖ヤコブ教会〜市庁舎〜聖バーフ大聖堂〜コーレン・マルクト(中央広場)〜聖ニコラス教会というコースで、半日で回れますが、じっくりと一日がかりで歩き回るのが良いでしょう。これぞゲント徒歩観光の白眉です。

フランドル伯爵城から聖ヤコブ教会へ!

フランドル伯爵城から聖ヤコブ教会へ!

写真:菊池 模糊

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聖ミハエル教会からレイエ川沿いを北へ向かうと、フランドル伯爵城へ出ます。この城塞は中世らしい雰囲気で、現在は拷問用具などを展示する博物館になっています。
このフランドル伯爵城から東へ川沿いに河岸であるクラーンレイを歩きます。デュレ・フリートと呼ばれる巨大な大砲に出会ったら南東方向に折れ、蚤の市で有名な金曜日広場に至ります。この広場の南に堂々とそびえているのが聖ヤコブ教会です。蚤の市の買い物を楽しんだら、ぜひ聖ヤコブ教会を見学しましょう。

聖ヤコブ教会は、毎年夏に開催されるゲント祭りの中心拠点となる教会です。
この教会は、基本はスヘルデ・ゴシック様式で、尖塔アーチやリヴ・ヴォールトがあるものの、飛梁(フライング・バットレス)は見られません。ロマネスク風の半円形アーチ構成も一部にあります。外観は単純で、内部はゴシック系としては比較的暗いです。

写真を御覧下さい。全体として、非常にすっきりした印象です。
ゲントの四大教会の中では一番シンプルな造形ですが、重々しく静かで落ち着いた雰囲気で好感が持てます。内部も必見で、華美すぎず調和があってとても綺麗なステンドグラスなどを鑑賞しましょう。

聖バーフ大聖堂で名画「神秘の子羊」を見る!

聖バーフ大聖堂で名画「神秘の子羊」を見る!

写真:菊池 模糊

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聖ヤコブ教会を見たあとは南西方面へ歩きゲント市庁舎に至ります。市庁舎は、ゴシック様式とルネサンス様式の連棟構造で、建築学的にも興味深いものです。この市庁舎の東側に威容を見せる巨大な教会が聖バーフ大聖堂です。

聖バーフ大聖堂は、北方ルネッサンス最高の名画「神秘の子羊」をはじめとする宗教的芸術作品の宝庫で、ゲント観光の目玉ともいうべき観光スポットです。
この大聖堂はロマネスク様式とゴシック様式の混合とのことですが、外から見ると屋根が高くて窓も尖塔型でゴシックそのものに見えます。
内部撮影禁止なので、写真は、大聖堂のステンドグラス外側の窓のアップです。中央上部に子羊マークが浮かんでいます。

聖バーフ大聖堂自体は入場無料(日祝の午前中はミサのため入場不可)ですが、「神秘の子羊」展示室は有料ですのでチケットを買って入場します(2014年末現在4ユーロ)。
展示室に入ると正面すぐにフランドル絵画の最高傑作「神秘の子羊」がガラスケースに入れられて展示されています。
右側に音声ガイドコーナーがありますので、そこで「ジャパーニーズ」と言うと、女性係員が手持ち音声ガイドを操作して日本語モードにセットして渡してくれます。見事な細密画で全人類の魂の救済をテーマにしている作品です。

この「神秘の子羊」は別名「ゲントの祭壇画」と呼ばれるとおり、聖バーフ大聖堂の前身である洗礼者ヨハネ教会に奉献する巨大な多翼祭壇画として、画家フーベルト・ファン・エイクが制作依頼されたものです。
フーベルト・ファン・エイクは生前に完成することができず、弟のヤン・ファン・エイクが引き継ぎ、兄の死後6年経って1432年に完成しました。絵画史的には、本格的油絵の世界最初の作品とされています。

この大聖堂には、「神秘の子羊」以外にも、高い天井を仰ぐ壮大なゴシック建築、美しいステンドグラス、巨大なパイプオルガン、ルーベンス作「聖バーフの修道院入門」、ワッセンボフ作「キリストの磔刑」、デルボー作「真理の説教壇」、現在の主祭壇、身廊両側に小部屋のように設けられたいくつもの礼拝堂、そして貴重なフレスコ画が残る広大な地下クリプトなど、みどころがたくさんあります。聖バーフ大聖堂は、ひとつのテーマに貫かれた博物館のようなものなので、ぜひ時間をとって、ゆっくり見学しましょう。

スヘルデ・ゴシック様式の最高傑作:聖ニコラス教会を見る!

スヘルデ・ゴシック様式の最高傑作:聖ニコラス教会を見る!

写真:菊池 模糊

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ゲントの旧市街の中心広場コーレン・マルクトにトラムで到着した時、最初に目に入るのが聖ニコラス教会ですが、市街をぐるっと歩き回ってから、ゲント観光の掉尾を飾るものとして、ゆっくり見学するのに最適な素晴らしい教会でもあります。
聖ニコラス教会は、スヘルデ・ゴシック様式の最高傑作とされる建築物です。トゥルネー地方産の青味のある石を使っており、その荘厳な美しさは圧倒的です。
11世紀から建築され13世紀に完成された、ゲント商人の富と文化の高さを象徴する教会でもあります。

なお、聖ニコラスは、紀元300年頃に小アジアのミラで大主教をつとめた人です。海運の守護聖人であることから、フランドル地方でも聖人として崇敬を集め、その名を冠する教会が造られました。セント・ニコラオス、シンタクラースなどと呼ばれ、いわゆるサンタクロースの起源とする説が有力です。

写真は東側から見た聖ニコラス教会の外観です、巨大ですが、瀟洒で華麗な雰囲気があり、柱と窓がが多く、壁構造の少ない、とても美しいゴシック様式教会であることが分かります。
教会の前には路面電車=トラムの架線が張りめぐされており、このトラムは市民と観光客の足になっています。今なお生き生きと繁栄するゲントの町らしい風景ですので、ぜひこのトラムにも乗ってみましょう。

聖ニコラス教会の中で至福のひとときを!

聖ニコラス教会の中で至福のひとときを!

写真:菊池 模糊

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聖ニコラス教会の内部も必見です。入場してみると、意外に明るい内部の雰囲気に驚かれることでしょう。
この教会は、壁ではなく柱で建物構造を支え、その柱の間はすべてガラスの窓にして、光が舞い落ちる壮麗なゴシック様式の特徴を極限にまで進めた建物です。
ゲント四大教会の中では、最も内部が明るく、青みのある構造石が映えます。

日曜日の朝にミサが行われるのですが、金曜日や土曜日にはミサの準備のため、パイプオルガンの練習をしている場合が多く、運良くそれに居合わせれば、教会建物を楽器としたパイプオルガンの美しくおごそかな音楽を浴びる至福のひとときを過ごすことができます。
また、内部装飾も上品で、高い天上の模様や祭壇画・説教壇・ステンドグラスの宗教芸術を鑑賞するのも一興です。

ゲントの町歩きの最後に、この教会で敬虔な気持ちに浸るのは、とても良い体験です。

おわりに

ゲントは中世の面影を残す町で、石造りの町並みはとても印象的です。
ゲントには様々な見どころがありますが、特にゲントの旧市街にある四大教会を巡礼すれば、敬虔な人々の足跡を辿る旅路となり、キリスト教徒でなくとも忘れがたい思い出作りとなるでしょう。

ゲントのホテルに宿泊するのも良いですが、ブリュッセルやブリュージュからの日帰り観光も可能なので、ツアーのフリータイムを活用することもできます。ぜひ趣のある上記の教会を中心としたゲントの町歩きを楽しんでください。

なお、このゲントへブリュッセルから公共交通機関を利用して来る方法やトラムの乗り方については、下記IC特急とトラムで!中世の面影が残るベルギーの古都ゲント」を参照してください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/11/29 訪問

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